税理士法改正報告

 

【概要】

平成26年3月20日に税理士法が13年ぶりに改正されましたことはご承知のとおりですが、これまでの経緯や具体的内容についてご説明申し上げます。
今回の改正にあたって日税連では12項目の改正要望事項を事前に表明していました。若干の変更経緯を経て別掲の改正案が成立しました。
 このうち、皆様の最大の関心事と思われる第3条の資格自動付与について触れておきます。ご高承のとおり、弁護士及び公認会計士は従来の税理士法により簡易な手続きにより税理士資格を容易に取得できる状況にありました。
 これに対し、税理士会は、弁護士会に対しては税理士試験のうちの一定の会計科目に合格することを税理士登録要件とすべきことを要求しました。しかし、弁護士会側はこれに対し事実上協議を拒絶しました。(具体的根拠は後述)。

 また、公認会計士協会に対しては税理士試験のうちの一定の税法科目に合格することを税理士登録要件とすべきことを要求しました。しかし、公認会計士協会側では、国際基準等を理由に原則としてこれを受け入れませんでした。この国際基準とは、「どの国でも会計士は税務の専門家であると認知されており、日本の会計士だけが税務の専門知識があるとの担保がないとすれば適正な監査人として受け入れられないおそれがある」という意味です。さらに、公認会計士試験のスキームを変えたくない、という理由もありました。そこで、国会議員による仲介もあって日税連・日税政と日本公認会計士協会・日本公認会計士政治連盟との協議が続き、最終的に、公認会計士になるために行っている実務補修の中に「国税審議会が定める税法に関する講習を受けなければならない」が追加されました。これは、税理士試験と同程度とされています。また、補修後の試験に合格する必要があります。つまり、この試験が税理士試験と同程度であるかを今後注視していく必要があると思われます。

【改正税理士法の項目】

[日税連要望事項が実現した項目]

租税教育への取組の推進

報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定等の見直し

非税理士に対する名義貸しの禁止

税理士試験の受験資格要件の緩和

補助税理士制度の見直し

公認会計士に係る資格付与の見直し

事務所設置の適正化

税理士証票の定期的交換

電子申告等に係る税理士業務の明確化

会費滞納者に対する処分の明確化

[行政からの提案により実現した項目]

調査の事前通知の規定の整備

税理士に係る懲戒処分の適正化

懲戒免職等となった公務員等に係る税理士への登録拒否事由等の見直し

[日税連要望事項のうち改正等されず会則規定に移行した項目]

研修受講の義務化

[日税連要望事項のうち実現しなかった項目]

経済的弱者に対する税務支援への従事義務化

通知弁護士等の公示等

 

【改正税理士法の内容】

1)日税連要望事項が実現した項目

①租税教育への取組の推進

税理士会及び日本税理士会連合会の会則に記載すべき事項について、租税に関する教育その他知識の普及及び啓発活動に関する規定を、その対象に加える。

税理士の業務(税理士法2条)に含まれていない印紙税、登録免許税、関税等を含む全ての税目を取り扱う。

平成2741日から施行。

②報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定等の見直し

報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止等について、兼業禁止規定がない一定の公職に就いた者を、その対象から除外する。

税理士が税理士業務を継続しつつ、兼業禁止規定のない一定の公職に就くことができるようにし、職業専門家としてその職能を活用し、公共・公益活動に積極的に関わることで広く社会に貢献することが期待される。

平成2741日から施行。

③非税理士に対する名義貸しの禁止

非税理士に対する名義貸しの禁止規定及びその違反に対する罰則を設ける。

非税理士に対する名義貸しの禁止規定及びその違反に対する罰則規定が、税理士の権利及び義務の条項として、新たに明文化された。

名義貸しとは、税理士又は税理士法人でない者が税理士業務を行い、その者に税理士が自己の名義を使用させる行為を言う。

平成2741日から施行。

④税理士試験の受験資格要件の緩和

一定の事務又は業務に一定期間従事したことにより認められる受験資格について、その従事期間を2年以上とした。

税理士試験受験時に必要な業務に従事した期間を従来の3年以上から2年以上に緩和された。

この緩和により、税理士試験受験者数の減少に歯止めをかけ、幅広い層から人材を確保することができ、税理士資格を付与するに相応しい合格者の資質を維持し、国民・納税者の期待に添う税理士制度とすることが期待される。

平成2741日から施行。(平成27年度の税理士試験から適用)

⑤補助税理士制度の見直し

他の税理士又は税理士法人の補助者として常時税理士業務に従事する税理士(補助税理士)について、その所属する他の税理士又は税理士法人の承諾を得て、他人の求めに応じ自ら税理士業務の委嘱を受ける場合の手続きを設ける。その業務範囲の見直しに伴い、その名称の変更、登録事項及び税務書類等への付記の見直し等所要の措置を講ずる。

雇用主の承諾など一定の要件を満たせば、自ら委嘱を受けて税理士の業務に従事すること(直接受任)ができる。

名称は「所属税理士」に変更になる。

 己の事務所を設置することはできない。

現在の補助税理士は、登録変更や税理士証票交換などの手続きは不要。

平成2741日から施行。

⑥公認会計士に係る資格付与の見直し

税理士の資格について、従来の税理士法第3条第1項及び第2項とは別に、公認会計士は、公認会計士法第16条に規定する実務補修団体等が実施する研修のうち、一定の税法に関する研修を受講することとする旨の規定を設けることとする。

 公認会計士への税理士資格自動付与が廃止された。

 国税審議会が指定する税法に関する研修を終了しなければならない。

平成2941日以降に公認会計士試験に合格した者について適用。

⑦事務所設置の適正化

税理士の登録事務について、日本税理士会連合会及びその登録申請等に係る税理士会は、その申請者等に対し、事務所の所在地等の登録事項(変更登録を含む。)に関し、必要に応じ、指導又は助言を行うことができることとする。

登録申請等の手続きや内容は、従来通り変更ない。

登録調査権限を明確にすることにより、事務所設置の適切な運用を担保できるようにした。

平成2741日から施行。

⑧税理士証票の定期的交換

税理士証票について、税理士は、日本税理士会連合会及びその所属する税理士会の会則の定めるところにより、定期的にその交換を受けなければならないこととする。

税理士証票の顔写真が古くなり、税理士会による連絡・指導等の会務運営に支障が生じることを防ぐとともに、国民・納税者や税務官公署職員と接するときに本人確認が容易にできる。

交換期間は、おおむね10年とする。

平成2741日から施行。

⑨電子申告等に係る税理士業務の明確化

電子申告等の電子情報処理組織を使用して行う業務について、税理士業務に含まれることを明確化する。

税理士法に規定する税理士業務の事務の範囲に含むことを明確化する。

⑩会費滞納者に対する処分の明確化

税理士会の会費を滞納する者に対して、懲戒処分をすることができる旨を明確化する。

2年以上の会費滞納者が検討されるもよう。

平成2741日から施行。

2)行政からの提案により実現した項目

①調査の事前通知の規定の整備

税務官公署の当該職員は、租税の課税標準等を記載した申告書を提出した者について調査する場合において、その租税に関し税理士法第30条の規定による書面を提出している税理士があるときは、国税通則法等の定めるところにより、当該税理士に対し調査の事前通知をしなければならないこととする。

調査の事前通知について納税義務者の同意があり、その旨が税務代理権限証書に記載されていれば、事前通知を税務代理人に対してのみ行えば足りることとなった。

納税義務者の同意を記載できる新しい様式の税務代理権限証書を使う必要がある。

平成2671日から施行。

②税理士に係る懲戒処分の適正化

税理士に係る懲戒処分のうち、税理士業務の停止について、その期間を2年以内とする。

税理士業務の停止期間が従来の1年以内から2年以内に変わった。

平成2741日から施行。

③懲戒免職等となった公務員等に係る税理士への登録拒否事由等の見直し

税理士に係る懲戒処分のうち、税理士業務の停止について、その期間を2年以内とする。

懲戒免職者とそれに準ずる者に対し、3年の欠格期間を過ぎても、税理士として適正を欠くおそれがあると認められる場合に、登録拒否できることとした。

懲戒免職の処分を受けるべき行為をした者も同様とする。(例えば、在職中の行為が懲戒処分を受けるべきものであったが、処分を受ける前に退職した者など。)

平成2641日以降の登録申請について適用。

3)日税連要望事項のうち改正等されず会則規定に移行した項目

①研修受講の義務化

研修受講を義務化する。日本税理士会連合会においては、研修義務の未履行者の公表等所要の措置を講じる。

4)日税連要望事項のうち実現しなかった項目

①経済的弱者に対する税務支援への従事義務化

税理士業務が無償独占とされていることから、税理士の社会的責務として、疾病等一定の場合を除いて、税理士会が行う経済的弱者に対する税務支援への従事を義務化する。

②通知弁護士等の公示等

通知弁護士等について、国民・納税者の可視性等の観点から、例えば、通知弁護士等の公示等が行われるような措置を講じる。

 

【隣接士業との交渉経緯】

1)日本税理士会連合会の主張(当時)

公認会計士又は弁護士に税理士の資格を付与するにあたっては、税法又は会計科目に合格する等の一定の能力担保措置を構ずるべきです。それは、より一層納税者の信頼に応え得る制度の構築のため必要不可欠な改正です。
よって、税理士第3条第1項3号・4号及び第2項を廃止し、無条件に資格を付与される制度を改めるべきです。
本来、各々の士業がその使命や業務に専念できるよう、業際問題ではなく制度問題として法改正を行わなければなりません。

2)日本弁護士連合会の主張(当時)

次のとおり、不相当な改正意見であるので、そのような改正には反対する。

租税法務(税務)は、基本的人権に係る本質を有し、弁護士こそが適任である。

税理士の業務は弁護士の業務の一部である。

税理士業務を弁護士が行いうることは、税理士法の制定以来一貫して政府答弁等で自明の理として確認されている。

3)日本公認会計士協会の主張(当時)

次の理由から反対する。

税務業務の位置づけと公認会計士がその担い手であることの相当性

税理士法制定時の趣旨に基づき公認会計士が税務の専門家であることの的確性

公認会計士が税務サービスを提供可能な専門家であるとの資質の確認とその資質向上のための継続的な研修の実施

隣接職種の資格者に対する能力担保措置を講ずる必然性

公認会計士が税務サービスを提供することによる国民のニーズへの対応

4)日本公認会計士協会理事会の決議(25.10.21

1.能力担保措置は、公認会計士が税務の専門家であるという国際標準を逸脱し、我が国の資本市場の信頼性を損なうおそれのあることから全面的に反対する。

2.恒久的に「公認会計士の資格で税理士業務を行うことが可能な制度」を維持するため、公認会計士がその資格で税理士業務を行うことができるよう法の改正を求める。

5)日本公認会計士協会との合意と改正

日本税理士会連合会・日本税理士政治連盟と日本公認会計士協会・日本公認会計士政治連盟が確認書によって合意を得たことから改正が実現しました。